平成十七年三月二十九日
証人 東京都福祉保健局長 幸田 昭一
 東京都議会議長 内田  茂殿
証人補助者の出席及びメモ等の持参について
 平成十七年三月三十日開催の社会福祉法人東京都社会福祉事業団による東京都社会福祉総合学院の運営等に関する調査特別委員会において、証人として証言を行うに当たり、左記の者が補助者として同席することを許可願います。
 また、証言に際して、メモ等を持参することも許可願います。
     記
1 氏  名 吉川 和夫
2 住  所 野田市
3 生年月日 昭和二十五年七月十七日
4 職  業 地方公務員

〇山崎委員長 お諮りいたします。
 本件は、申し出のとおり許可することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇山崎委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。

〇山崎委員長 証人、福祉保健局長幸田昭一君から証言を求めます。
 それでは、昨日に引き続き証人に対する尋問を行います。
 委員の発言を許します。
 大西理事。
〇大西委員 夜遅くまでお疲れさまで、もう早朝になりますよね。それこそ、今回この百条委員会が設けられた経緯については、先ほど我が党からもお話をさせていただきましたけれども、私たちも驚きました。
 突然、産経新聞に「都有地に補助金十九億円で施設 専門学校へ不適切便宜」なんていうんで、センセーショナルな、産経新聞の一面トップを飾ったわけで、我が東京都のローカル記事が全国新聞の一面トップを飾るなんていうのはめったにないことでして、そして、それに基づいてさまざまな論議が行われてきました。それに基づいてというか、それに端を発して論議が行われてきました。
 その中で、幸田福祉保健局長は、厚生委員会そして予算特別委員会等々で、不正はない、適時適切に運営されてきたんだということについて、終始一貫、何の矛盾もなく主張し続けてこられたわけでございまして、これは、私どももそのような判断の中から、幸田局長の勇気ある、不屈の信念に基づいた姿勢に対して、心から敬意を表しているわけでございます。
 したがって、私どもは、今までの厚生委員会あるいは予特において我が党からも質問をさせていただきましたけれども、改めて百条委員会が設置されて、この設置目的においてどうしても記録に残しておかなければならない問題について、重複する点も多いと思いますけれども、質問をしてまいりたいと思います。
 先ほど、各委員からの質疑の中で、不存在の未提出資料の問題について意見が出されました。明らかにこれは局内にあると思われる資料が不存在として未提出になっていることにつきましては、先ほど委員長の方から、知事に対して改めて資料要求をさせていただくということで理事会で集約をさせていただいたわけでございますけれども、この際、改めてお伺いをいたしますけれども、不存在等未提出情報は、福祉保健局として、ないと思いますけれども、隠匿していると後日問題となるので、まず、そうした情報があるかどうかについて確認をしたいと思います。
〇山崎委員長 そのまま座って答弁していただいて結構でございますから。
〇幸田証人 お答えする前に、大変申しわけございません、ご高配を賜りましてありがとうございます。
 社会福祉総合学院に関します資料につきましては、再三再四、局内の関係部署に対しまして、徹底して資料を調査するよう指示してまいりました。本委員会の資料要求に関しましても、万全を期するよう対応してきたつもりでございます。
 しかしながら、いかんせん過去のことでもございますものですから、また、かつ関係部署も多岐にわたるということで、万が一にも漏れのないようにと、現在も引き続き調査していることをこの場で申し添えさせていただきたいと存じます。
〇大西委員 さきの予算委員会で、大塚副知事の、不法ということは全くないとの答弁がなされたわけでございますけれども、それについてどのようにお考えになるかをお答えいただきたいと思います。
〇幸田証人 社会福祉総合学院がお話の中心になっているわけでございますけれども、この学院、私どもが直接所管をしているわけでございます。当然のこととして、大塚副知事と同様に考えております。
〇大西委員 そもそも論から始めたいと思うんですけれども、そもそもこの社会福祉総合学院設置にはどのような背景があったのかについて、お答えをいただきたいと思います。
〇幸田証人 平成六年当時、行政改革推進大綱を踏まえまして、既存の保育士の養成所でございます都立の高等保育学院、また社会福祉主事を養成いたしておりました社会事業学校、この廃止に取り組んでおったところでございます。
 今日、この少子高齢社会を迎える中で、これらの事業を発展的に継承していく、こういう考えのもとに、福祉の分野に強く求められております実践的でかつ高い専門性を備えた人材、こういうものを養成していくことが必要になっているというふうに思っておりました。で、民間あるいはまた区市町村におきます人材養成を支援する新たな福祉人材養成機関を整備することが求められていたと、こう承知をしております。
〇大西委員 社会福祉総合学院設置の意思決定、これは福祉保健局独自で進めてきたのかどうかということが一点。もう一点は、リカレント、再教育が必要となってきた背景についても、あわせてお答えをいただきたいと思います。
〇幸田証人 福祉人材の養成に関するということは、大変重要なことでございます。かつまた、相当の経費が必要になってくるわけでございまして、当然のこととして、適宜知事の判断をいただく、あるいはまた都議会に対しましても報告の上、設置に関します意思決定というものを行ってきたと認識をしております。
 リカレントは、福祉のサービスというものは、普遍化、一般化というものが進む中で、利用者からはサービスの質というものが求められてきている時代でございます。そういう中で、このサービスの現場で働いている実務者、こういう方々のさらなる資質の向上というものが必要でございます。このため、こういう取り組みも重要だということから、リカレント教育というものが必要になってきたと認識をしております。
〇大西委員 施設内容は他の教育施設と異なるところがあるのかどうか。教育内容の変更について、十一年一月以降、十三年四月開校時まで、時系列的に整理して説明していただきたいと思います。
〇幸田証人 社会福祉総合学院の設置に向けてのあの経過を見てみますと、他の施設に比べまして充実した教育設備あるいはまた学習環境というようなものが必要になると。それからまた、社会人や実務者が学びやすいように、授業の時間帯でございますけれども、こういうものは夜間あるいはまた土曜の昼間とか、こういうことを、授業を行う時間帯を配慮する、検討するということが行われてきたというふうに承知をしております。また、加えまして、介護保険制度がご案内のように平成十二年度、導入されてきたわけでございますが、社会福祉の状況というものが大きく変化をしてきているわけでございます。こういうことから、教育内容の見直しというものも迫られたというふうに理解をしております。
 で、平成十一年の一月に、整備主体を社会福祉事業団にするということで、当初の介護福祉士養成等々は取りやめまして、リカレント教育を中心として実施をする、開校をする、また、あわせて定員についても縮小をしてきたと、こういう経過がございます。
〇大西委員 夜間中心の施設利用と方針変更した十一年十月以降、昼間の活用について全く考えてこなかったのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 当時の資料によりますと、社会福祉総合学院には非効率な施設利用や運営体制という課題もございまして、昼間のこの空き教室の活用を図ることを含めまして、この社会福祉総合学院のあり方に関しましても、平成十三年の七月にワーキンググループを設置いたしまして、鋭意検討をしてきたという経過がございます。
〇大西委員 これは、石原都知事が登場してから、行財政改革というのを政策の大きな柱として思い切った改革を今日までなし遂げてきたわけで、石原知事という強力な指導力を持った知事であればこそ実現できた改革もたくさんあったと思うわけですね。
 そういった中で、今回の見直しは、福祉改革の一環であるとのもちろんお話もありますけれども、率直に考えると、一方では全庁的な行革の流れと軌を一にしているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〇幸田証人 財政状況、あるいはまた人的措置と申しましょうか、こういう観点から、そのより効率的な対応を図るという意味では、おっしゃるとおり、行政改革という観点からの取り組みというふうに認識をしております。
〇大西委員 石原都知事が登場以来、思い切った福祉改革も、行財政改革の一環としてもあわせて行ってきたわけで、我が議会においてもあらゆる場で論議が繰り広げられたわけで、特に共産党とは石原都知事も白熱の論戦を繰り広げたわけですけれども、福祉保健局は、知事に対して福祉改革のブリーフィングを、いつ、どのような形で実施しているのか、また、そのときの知事の反応はどんなものだったのか、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 当時の資料によりますと、学院のこの運営形態の見直しというものに関しましては、平成十三年の十一月に福祉改革STEP2を知事に説明した際に、その中に項目の一つとして取り上げられていたと。また、翌年の、これは要求資料の中にもご提出してございますけれども、一月に、この四月、これは十四年四月からスタートということでございましたので、この四月からの委託実施に向けての知事に対して説明をしたという資料がございまして、知事の方に十分説明したというふうに私は承知しております。
 ただ、当時私は、福祉保健局、当時は福祉局でございますけれども、在籍をしておりませんでしたので、その知事の反応というものは、ちょっと詳細にはわかりかねます。
〇大西委員 十三年四月に社会福祉事業団の直営で開校しているのが、この時点での局の問題意識というのはどのようなものであったのかについて、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 ご案内のように、大宗が都の補助金というものに頼っていた状況からして、自立経営という状況にはなかった、そういう課題が一方であったわけでございますけれども、また、非効率な施設利用とあるいはまた非効率なその運営体制と、こういうことにつきましても、問題点と申しましょうか、課題であったと認識をしております。
〇大西委員 見直し前の平成十三年度、施設の利用状況はどういうような状態だったのかについて、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 十三年度の応募状況でございますけれども、通学課程とそれから通信課程がございましたけれども、通学課程に関しましては、応募者が百九十名、入学者が九十五名でございます。また通信課程は、定員二百名に対しまして応募者が六百十名ございまして、そのうち入学者は二百三十七名でございます。
〇大西委員 見直しの検討はどのように進められてこられたのかについて、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 平成十三年の七月に、先ほど申し上げましたけれども、都立施設改革検討プロジェクトチームというのが、親がございまして、その下にワーキンググループを設置したわけでございます。この社会福祉総合学院に関しますワーキンググループの中で、民間事業者からいろいろ参考意見を聴取するなどいたしまして、改革案の取りまとめに取り組んだというのが状況でございます。
〇大西委員 余剰となった昼間の空き教室について、都立施設改革プロジェクトではどのように活用しようとしたのかについて、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 当時の検討チームのメンバーに、私もちょっと当時のことを聞いたんでございますけれども、やはり明確に、非効率な施設利用というものは課題として認識をしておったということでございます。で、検討を進める中で、現行事業の継続を前提にして施設の一括貸し出し、こういうことで有効活用を検討しようということで改革の方向を取りまとめたと承知をしております。
〇大西委員 先ほどの名取理事の松澤財務局長に対する尋問の中で、施設の有償貸し付けについて財務局に相談したかしないかという点について、あたかも財務局にはっきりとした形で相談していなかったのではないかというような示唆があったわけですね。それに対して松澤局長は、目下調査中であると。そして、経緯については現在のところ不明であるというような答弁が先ほどされているわけですね。
 そこでお尋ねをしたいと思いますけれども、財務局に相談したのか、また相談の結果はどうだったのか、時系列に説明していただきたいと思います。
〇幸田証人 この件に関しましては、過日の予算特別委員会におきましてもご質問をちょうだいしたわけでございますけれども、過去の資料によりますと、具体的には、平成十三年の八月二十八日に財務局の財産運用部に見直しについての相談をいたしまして、その後、当時の局におります担当副参事でございますけれども、財務局へ出向きまして説明をいたした後の平成十三年の十月二十三日に、公有財産管理運用委員会への付議は不要であると、こういう回答をいただいたわけでございます。
〇大西委員 これは、明らかに財務局長との答弁の不一致の点ですね。しかも、名取理事から指摘のあった事実関係とは全く異なることが明らかになってきているわけで、これについては、今後しっかりとこの百条委員会の場で検証して、真実はどこにあるのか、これを明らかにしていきたいと思います。
 次に、財務局との相談結果を受けて、どのような事務処理を行ったのかについて、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 財務局との相談と並行いたしまして、平成十三年の九月十八日に、当時の福祉局でございますが、局として改革方針を決定をいたしまして、また、その決定の内容を社会福祉総合学院の方に、協議会に報告をいたしまして、事業団の方からは、都に対して、土地等の無償貸付契約の条項に基づきまして、運営方法の変更の協議がされたというふうに承知をしております。また、さらに事業団におきましては、改善方針につきまして理事会の決定も見ております。で、平成十三年の十月二十三日に財務局の回答をいただいて、当時の局が事業団に対して運営方法の変更の承認を行ったと承知をしております。
〇大西委員 こうした点が明らかになるに従って、なぜこれが不正な貸し付けが行われていたとか、そういう形で表現されていくのか、私どもには全く理解ができないわけですね。
 さらには、今度は業者の選定に当たっては、公募手続と審査はどのように行ったのか、これについても時系列に説明してほしいと思います。
〇幸田証人 この十月の二十三日以降、十月の二十五日でございますけれども、十月の二十五日に公募要項を発表いたしまして、応募を平成十三年の十月二十六日から一カ月間受け付けをいたしまして、この応募をされた方々を中心に、審査委員会を設けたわけでございます。この中には外部の公認会計士も含めまして、審査の上、事業者を選定したと。で、十二月の二十八日に発表をいたしたところでございます。
〇大西委員 敬心学園との賃貸借契約はどのように行ったか。また、その際、特に配慮したことがあるのかどうかについて、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 事業団と学校法人さんの方とは、借地借家法に基づきまして、定期建物の賃貸借契約を結んだものでございます。これは、十四年の四月一日に締結をしております。また、法人さんの方から、法人さんが事業団からの委託事業と、それからみずから実施をいたします自主事業、これは福祉人材養成の事業でございますけれども、これを実施するために、建物を一括の貸し付けをしたという内容でございます。で、これは一括貸し付けではございますけれども、総合学院からの委託事業、これを、この事業にかかわる使用というものは優先されるんだと、こういう内容になってございます。
〇大西委員 これについても先ほど松澤局長との間で多くの委員から論議があったわけですけれども、今の幸田福祉保健局長の答弁を聞いて、全く、東京都の福祉政策の一環として人材育成をしていく、そういう公の事業を民間委託してやらせているわけであって、それを第一優先にしているわけですね。ですから、この公性がないということが疑義がある的な松澤局長の答弁というのは、一体どこに視点を置いているのか、我々も理解ができないところがあります。これについても、今後、我が党としてもしっかりと究明をしていかなければならないと思います。
 平成十四年度の予算要求資料や要求説明では、この見直しの件をどのように説明しているのかについても、お聞かせいただきたいと思います。
〇幸田証人 改革の案でございまして、この効果としては、経費の削減はもとより、施設の有効活用を図ったというふうに考えております。具体的には、運営費補助が全額削減ということになりましたし、また、職員につきましても、非常勤職員を除きまして皆減をしたところでございます。そういう意味では、民間の創意工夫を生かした、自主事業としての福祉人材育成事業が展開できるようになったということでは成果があったというふうに私は思っております。
〇大西委員 見直しを行ったことの効果が、今局長がご指摘のように具体的にあらわれてきていることは、私どもも、今日までの各委員会等での審議を通じて十分認識しているつもりです。
 次に、財政再建推進プランの達成にも貢献していると思うんですね。財務局からのこれに対する評価はどのようなものだったのかについて、お聞かせをいただきたいと思います。
〇幸田証人 先ほどご答弁いたしましたように、財政効果という点では、運営費補助が全額削減ができたわけでございます。これは、このままでいけば、もしこれがないとすれば、それ掛ける年数ということになりまして、非常に膨大なものになるだろうというふうに思います。そういう意味では、財政再建には貢献できたものと私は確信をしております。これまでの歴代の先輩局長を初めとして多くの職員が汗をかき、工夫をしてきた成果だというふうに私は思っております。そういう意味では、引き続き経営改善に向けまして、なお一層の努力をしていかなきゃいかぬというふうに思っております。
 ただ、成果だということでございますけれども、評価だということでございますが、これは、全庁これに取り組んでいるわけでございまして、財務局から評価をいただくようなものではないかなというふうには思います。
〇大西委員 こうした意味で、福祉改革の先進的な事例として、この社会福祉学院の問題が指摘できると思うんですよ。それは、今お話しになったように、石原都知事の最重要課題であった行財政改革の一環としても、多くの行財政効果を上げてきているわけですね。それが、ある日突然、知事が記者会見で不正があるかのごとく表明されたり、あるいは、仄聞するところによると、濱渦副知事が多くの庁内の機会において、刑事告発を受けるような不正がここにはあるかのごとくいわれているということも、我々は多くの情報から知り得ているところなんですね。
 こういう形でこの福祉改革、行財政改革がねじ曲げられてきたというのは、私どもにとっては決して見過ごすことのできない問題だと思うんですね。そして、ましてや都民の間に、産経新聞の記事や週刊ポストに代表されるがごとく、あたかも不正があったかのごとく報道をされて、都民ですら不信感を持ちかねない。そういう意味では、これからの百条委員会の中で、正しい福祉改革、行財政改革の一環である今回の問題についてさらに明らかにして、それでは、なぜ正しいものが、不正のないものが、あたかも不正があるかのごとく、一部庁内で人為的にそういう流れがつくられてきたということが一体どういうことなのかについても、明らかにしていきたいと思います。
 最後になりますけれども、これは確認ですけれども、臨床福祉専門学校の設置認可に関連して、敬心学園が練馬区長あてに提出した認可申請書を見たことがおありになるのか。また、この写しをお持ちなのかについて、お聞かせをいただきたいと思います。
〇幸田証人 今回の調査の過程で、私どもも資料の収集、整理をしてまいりました。その中で、この写しは見ております。また、これは局で保存をしてございます。
〇大西委員 私、幸い幸田局長に対する尋問をさせていただきましたけれども、一点の曇りもなく、よく理解をさせていただきました。しかし、今までの濱渦副知事だとか松澤局長や何かの尋問に対する証言については、多くの疑義がこの百条委員会の審査の過程の中で明らかになってきていますから、これらについては、これからも徹底的に真相を究明していきたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
〇山崎委員長 大西英男理事の尋問は終わりました。